刑事事件の種類
刑事事件とは
刑事事件とは、傷害や窃盗、痴漢などの犯罪行為を行ったとされる被疑者に対して、警察や検察などの国家権力が捜査を行い、裁判にかけて判決を下されることが予定される事件をいいます。
刑事事件では対国家との関係になるので、民事事件のように和解することですぐに終了となるわけではありません。
ただし、刑事事件の加害者と被害者が示談をすることで、警察が検察に事件を送致しなかったり、検察官が不起訴処分にするケースもあります。
一般の人にとって、刑事事件は他人事のように感じられると思いますが、いつどこで自分や家族が刑事事件の被疑者になるかわかりません。
もし、自分や身近な人が刑事事件の被疑者や被告人になった場合は、できるだけ早く弁護士に相談することをおすすめいたします。
暴行・傷害
暴行
暴行とは、殴る、蹴る、刃物を振り回す、石を投げる、髪の毛を引っ張るなど、人の身体に対する有形力の行使をいいます。
たとえ被害者がケガをしなかった場合でも、有形力の行使があれば暴行罪が成立します。ケガをさせた場合には、傷害罪として取り扱われることになります。
暴行罪は「2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」と定められています。
傷害
傷害とは、人の身体を傷つける行為をいいます。ナイフなどで切りつけてケガを負わせる行為だけでなく、故意に病気を感染させたり、執拗な無言電話や嫌がらせの騒音を繰り返し、精神的な障害を生じさせたるなどの行為でも、傷害罪が成立する場合があります。
傷害罪は「15年以下の懲役または50万円以下の罰金」と定められています。傷害罪は、暴行罪と違い、人にケガなどを負わせているので、罪が重くなります。
窃盗・万引き・強盗・横領
窃盗
窃盗とは、持ち主の意思に反して、物の占有を奪うことをいいます。家に忍び込み物を盗む空き巣、スリなどがあります。
窃盗が行われる際に、反抗を抑圧するに足りる程度の暴行・脅迫が用いられると強盗罪となる可能性があります。
窃盗罪は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」と定められています。
万引き
万引きは法律上では窃盗罪にあたり、営業中の店舗で陳列されている商品を盗むことはこれにあたります。
「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」と定められており、何度も繰り返している場合や犯行態様が悪質な場合は、万引きであっても裁判になったり、実刑判決が下されることもあります。
強盗
強盗は、反抗を抑圧するに足りる程度の暴行・脅迫を用いて、財産を奪うことをいいます。
たとえば、刃物や銃を突きつけて脅すなどの手段を用いて他人からお金を取ろうとすれば、強盗罪になる可能性があります。
強盗罪の刑罰は「最低でも5年以上の有期懲役」と定められています。
横領
横領とは、他人から預かって保管中の財物を、自分のものにしたり、売却するなどの行為をいいます。
他人の財物を勝手に自分のものにするという点では窃盗罪と共通していますが、誰が占有しているかに違いがあります。他人が占有しているものを奪うのが窃盗罪で、他人から預かって自分が占有しているものを奪うのが横領罪です。
横領罪は「5年以下の懲役刑」と定められています。
詐欺
詐欺とは、人を欺いて財物を騙し取る行為をいい、詐欺罪は「10年以下の懲役」と定められています。
詐欺の手法には、振り込め詐欺、保険金詐欺、結婚詐欺、オレオレ詐欺などさまざまな手口があります。相手を騙して高価なものを奪ったり、高額な現金振り込みをさせた場合には、重い刑が科される傾向にあります。
痴漢・わいせつ・盗撮
痴漢
痴漢は行為の内容によって、条例で処罰される場合と刑法の強制わいせつ罪で処罰される場合とがあります。
東京都の条例では、痴漢行為は「6月以下の懲役または50万円以下の罰金」と定められています。
痴漢は被害者に大きな苦痛を与える行為なので、被害者が示談に応じないケースもあります。
また、過去には、満員電車で痴漢と間違えられ、逮捕されるという冤罪事件も発生しています。
冤罪で逮捕されたときは、すぐに弁護士を呼んで取調べに対する対応について相談することが必要です。
わいせつ
強制わいせつ罪とは、暴行や脅迫によって被害者にわいせつな行為を強要する犯罪です。夜道でいきなり女性に抱きつく、女性が嫌がっているのにキスを強要する、また悪質なセクハラも強制わいせつ罪に該当する可能性があります。
強制わいせつ罪の刑罰は「6ヶ月以上10年以下の懲役」で、罰金刑はありません。
盗撮
盗撮は各都道府県で迷惑防止条例により規制していて、東京都の条例では「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」と定められています。
都道府県によって多少異なりますが、「公共の場所や乗り物内で、羞恥心や不安を与える方法で、下着や身体などを撮影、あるいはカメラを向ける」と迷惑防止条例違反となります。
大麻・覚せい剤等薬物事犯
大麻所持罪は5年以下の懲役、覚せい剤所持・使用罪は10年以下の懲役刑が定められています。譲渡しや譲受けも犯罪であり、営利目的での行為や外国からの輸入行為はより重い刑罰を科されることになります。
大麻や覚せい剤等の薬物事犯で、逮捕、起訴された場合も、弁護士による早期対応が望ましいです。
実際に罪を犯していないのに逮捕されるケースもあり(偶然一緒にいた人が薬物を所持していたために、自分も一緒に逮捕されてしまった事案等)、その場合は、逮捕当日等の早い段階から、弁護士が警察署でご本人に面会し、捜査機関による取調べへの対応等を検討する必要があります。
逆に、実際に罪を犯している場合は、再犯率の高いこの犯罪類型では、有効な再発防止対策を早期に講じることが重要です。専門家である弁護士に早めにご相談いただき、薬物の入手経路を断つことや、適切な医療機関での治療、自助グループへの参加等の、具体的な再発防止対策を共に検討して講じていくことで、早期釈放の可能性を高め、薬物に依存しない人生へとつなげていくことができます。
交通犯罪(煽り運転等)
交通犯罪には、道路交通法に違反する犯罪(スピード違反、飲酒運転、無免許運転など)と、自動車運転死傷行為処罰法に違反する犯罪(煽り運転、アルコール・薬物等による危険運転、制御できない高速度での運転など)があります。
最近、とくに問題になっているのが、他の車の走行を邪魔する煽り運転です。しかし、自分に悪気がなくても、周囲から見て「煽り運転」と判断されたら、加害者になって逮捕される可能性もあります。
自動車運転死傷行為処罰法の危険運転致死傷罪は、人を負傷させたら「15年以下の懲役」、死亡させたら「1年以上の有期懲役」と定められています。
少年事件
少年事件とは、20歳未満の者が犯罪に相当する行為をした事件をいい、家庭裁判所の審判によって処分が決定されます。
家庭裁判所には、裁判官とともに調査官が配置され、少年の人格や家庭環境などを調査・観察しながら、適切な処分を決めていきます。
家庭裁判所の審判は、前科として取り扱われることはありませんが、14歳以上の少年が重大な刑事事件を起こした場合には、家庭裁判所から検察官への逆送が行われることがあります。
逆送を受けた検察官は、少年に犯罪の嫌疑ありと判断すると、原則として少年を起訴することになります。この場合には、少年であっても刑事裁判にかけられ、有罪判決が確定した場合には、前科がつきます。